BD11巻特典CDドラマ 「THE FOLLOWER 2」
カテゴリ: 蒼穹のファフナー
 22話から23話までの間にあった、一騎総士真矢の三人が経ていた選択の物語でしたね。

 フラゲ組がどちらかと言うとローテンションな呟きが多かったので、一体どんなドラマなのかと若干不安でしたが、描かれたテーマやメッセージは本編とほぼ同じで補完程度でしたので、個人的にはそんなに「凄い!」とか「これぞファフナー!」という感動はありませんでした。

 まあ、それは作品と言う大枠で見た場合ですので、とかく本編では少なかった一騎たちの心情描写があったり、キャラクターに個別な思い入れがある方は、真壁紅音や皆城公蔵それに父ミツヒロ・バートランドが現れて息子娘と会話する、というシチュエーションにぐっと来たのではないかと思います。
 
 中身はミールが保持する彼らの存在した情報と記憶をもとに作り上げた人格ですけどね。(^^;)
 完全に再現されたなら、それは本物の親とどう違うのかと問われると、私も答えに窮しますが。

 ツイッターでは優しいみなさんがネタバレを気にして感想すら呟くこともほぼありませんが、私はいつでもネタバレ全開!が信条なので、CDドラマを聴いてること前提でオープンに自前の感想など述べてみようかと思います。


 





 
 このCDドラマをユング心理学的解釈でひと口に語れば「父殺し」、または一騎総士真矢の集合的無意識にあるアニマ像アニムス像を親の姿として意識化し、それとの対話を経てなされた人格の統合(自己実現)、といったところでしょうか。

 まさかこんな真正面から典型的などストライクで、ずっと省略されてきた主要キャラクター三人の心情描写を、夢と無意識の心的イメージを使って描写してくるとは思いもしなかったので、大変に面白かったです。

 特に総士については、これまで自分の規範としていた公蔵(というより竜宮島)の理念を否定することにより、総士が自ら背負いこんでいた父性的役割も同時にほぼ解消されていたことが分かりました。(最後の父性的役割の解消は指揮を剣司に委ねた場面)

 そうすることで彼が「父」から「子」になる準備は整い、かくて冲方さんの言によれば、新主人公に倒されるべき一騎こそが次の父性的役割を果たす人物になるようです。

 とは言っても、一騎と総士では父性的役割の表現はたぶんに異なるものと思われますが。


 総士が「否定」という意志に肯定的な意義を与えたことで、「否定」の名を持ち敵を同化し殺すことしかできなかったマークヒニトもまた、肯定的な側面を見出されたんですね。

 グレートマザーの具現化たる機体であったマークニヒトが、その否定的側面(すべてを吞み込み死に至らしめる)のみから、本来の肯定的側面(命を生み育てる)の性質をも再獲得することで両面が統合されたのだと理解しています。


 それにしても、真矢はともかく総士まで心理的「父殺し」するとは思いませんでしたね~。

 まあ彼が一人の人間として自我を確立するための最後のイニシエーションではありましたが、それをきっちり見せて……いや聞かせてくれるとは。良い意味で驚きました。

 重度ファザコンの冲方さんも、やればできるんじゃないですか。(笑)
 それもこれも、やはり冲方さん自身が父親という立場になったことが大きいんでしょうけどね。

 そもそもHAE初期草案の、総士のクローンの少年を青年一騎が助けるというアイデアも、大人になった今の自分なら、きっと「父」である総士(のコピー)を理解し助けることができるんじゃないかという冲方さんの極度のファザコンのなせるわ(ry


 この「父殺し」についてはユング氏ではなく高弟のノイマン氏が言及しているのですが、その意味するところは母性との分離のみの「母殺し」よりも上というか先というか、父性の象徴する古い文化的な伝統や既存の規範などを壊して新しいものを作り、それを社会に提示し問うこと、とされているようです。

 総士と真矢はそれぞれ父と異なる自分なりの理念や思想を彼らに提示した、その瞬間に二人の心の海の中に進むべき「道」が現れた。

 教科書のように完璧な親離れと精神的自立、そして古い価値観の世界からの脱却イメージでしたね。

 真矢の海は「波が引いて」白い砂で出来た道が現れたようですが、「海が割れた」総士の方はもろに出エジプト記の「葦の海の奇跡」をイメージしているようです。

 エメリーやナレインだけでなく、総士にもモーセ像が仮託されていたというわけで、彼らがみな約束の地に入れなかった(生きて住むことができなかった)ことも、この時点で予見されていたのでした。

 まあ、彼らの命は巡りながら生まれ変わり結局のところ海神島にいますけどね。(苦笑)


 今回一騎だけは母との対話であり、さらにこの後もミールの分身としてのカノンと翔子に出会い選択するわけですが、おそらく一騎にとっての「父殺し」は最終回の総士との別れを受け入れたことだったのかと想像されます。

 一騎の場合は、これから新しい価値観を提示するというよりも、前回の座談会で冲方さんにより賢者的な存在となる行く末が提示されたので、もはや彼自身が海神島の次世代を見守る英雄という名の「殻」――古い価値観の体現者になっているんでしょうね。

 であるがために、いずれ「倒される」と。

 いやー、美しい構図ですね。本当に完璧ですよ!
 「物語」としてはね。(笑)

 消費されるエンタメであるアニメやキャラクターとして、それが面白いと受け取ってもらえるかどうかは私の預かり知らぬところです。

 しかしEXODUSのラストシーンが最初から決まっていてしかも変わらなかったことから、冲方さんは「これしかない」という物語の結末、そこで生きるキャラクターたちの真実に辿り着いたなら、どのようなエンタメ的要求やファンの意見があろうと安易に迎合したりはしないと信じています。

 EXODUS放送中に感想で何度か言ってましたが、一騎はまだ生きなければならない人であったし、総士は逆に人として死ななければならなかった人なので、ラストシーンが一騎と子総士の親子の姿であったことはもう……もう……限界突破で宇宙規模の全面大肯定するしかない、私にとっては究極の理想を絵にして見せてくれた、まさにパーフェクトな場面でした。(←長い)


 総士が否定した島の理念は、自分たちだけの平和を維持するために世界とのコミュニケーションを閉ざし対話を拒否するという姿勢でしたが、それはたぶんテンプレ的に受け取れば日本のいわゆる「一国平和主義」とレッテルを貼られる考え方(実際そうと表現しきれるものではありませんが)であったのかな、と推察されます。

 それに対してEXODUSの中で描かれていたのが、広登と暉の理想である自分たちの知っている平和を世界に伝えたいという「世界平和主義」的な考え方であったと思われます。

 戦争解決としての武力にとどまらず、戦争解決の可能性を守護するための武力として、その行使を自認した三人ではありましたが、第四次蒼穹作戦前のブリーフィングで自分から人類軍を相手にすると言った一騎が史彦に諌められたのは、一騎と同じ意志を選び覚悟を決めていた真矢と総士の反応からして、許容されるべき力の行使を逸脱しかねない個人感情があったからなのかもしれませんね。

 ところで、真矢が読み上げた爆撃機ティーポットの乗組員の名前、そうじゃないかと思ったら、やはりすべてエノラ・ゲイの乗組員の名前を捻っていましたね。

 エノラ・ゲイ乗組員は、

 機長:ポール・ティベッツ
 副操縦士:ロバート・A・ルイス
 航法士:セオドア・ヴァン・カーク
 後尾機銃主撮影係:ジョージ・R・キャロン

 ティーポット乗組員は、

 機長:ハリソン・ティベット
 操縦士:ベクター・ルイス
 航法士:チャールズ・カーク
 データオペレーター:ハンナ・キャロン

 まあそもそも、かつてウォルターが所属していた太平洋方面「509混成航空部隊」自体がエノラ・ゲイの所属でしたけどね。ここまで徹底して近似させるとは思いもしませんでしたが。


 ファフナーではこれまで戦争の様相として、1期では日本の専守防衛と非戦主義、そしてHAEでは原爆とベトナム戦争が織り込まれていました。

 EXODUSでは今のところ直接言及はされていないものの、原発事故と原子力技術や核廃棄物、そして上記の例からHAEと同様に原爆。
 そして現在も中東を混乱に陥れている、分裂したイスラム諸勢力による泥沼戦争というところでしょうか。

 HAEの続編であるEXODUSなので、再び原爆のイメージが作品に出てきたのは当然かもしれませんが、EXODUSではさらに脚本に入る前に福島第一原発での3基メルトダウンという未曽有の大惨事がありましたからね。

 やはり「日本人と核」というテーマは、切っても切り離せないものなのだろうなと思います。

 

 ちなみに私はEXODUSで描かれた核関連のメタファーをざっくり見て、暴走しないニヒトにより「人は原子力技術を理性的に駆使すれば原発をコントロールできる」、ただし核のもつ本来的な制御不能の巨大なエネルギーの象徴であるアルタイルを人類に有益なものに変化させるのは不可能、よって「封印して未来を待つしかない」、というように受け取っていました。

 石棺から発進したニヒトが赤い森を通りオンカロをくぐり抜けて行き着くところは、もう放射性廃棄物最終処分場しかないですものね。(つまりニヒトも眠る)

 とまあ、このような解釈に辿り着いたのは25話が終わった後だったので、最終回で島ごとアルタイルが封印されるのも「これしかないな」と思いながら見ていたのでした。

 良くも悪くも、今は未来に投げっぱなしジャーマンなのが核技術とその廃棄物、そして人類の技術の進歩と精神の成熟なのでしょう。


 話がえらい着地点に来てしまいました。(^^;)

 当然のことながら、ここで書いたのはあくまでファフナーという多角的な作品の一面を私が個人的に思考したにすぎないものであり、こんな風に見てる人がいたんだと受け取って頂ければ幸いです。

 あのCDドラマを聞いた感想がこれになるのは本当に私くらいのものでしょうし。(苦笑)

 EXODUSでの核関連については書きたかったけどなかなかまとまらなかったので、ちょうどいい機会でした。


 今までのドラマCD特に「GONE/ARRIVE」との関連を踏まえた感想とか、キャラクター個人の心理の掘り下げとか、もっと普通の話(笑)も書きたかったですが、とりあえず今回は時間も無いのでこの辺で。



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2016.05.03 / コメント: 0 / トラックバック: 0 / PageTop↑
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