BD10巻特典座談会CD パーソナリティ:angela ゲスト:冲方丁
カテゴリ: 蒼穹のファフナー
 EXODUS放映後に初めて冲方さんのコメントが聴けるということで、発売日の真夜中に貴重な睡眠時間を削って聞きました。(笑)

 購入したBDは2クールめに入ってから時間が無さ過ぎて、

 7巻→先行予約ハガキ取るために開封しただけ
 8巻→開封もしてない
 9巻→Amazonの配送袋に入ったまま

 という悲惨な状態が続いていたので、せめて10巻だけはと。(^^;)

 お話の内容はすでに知ってたことやまだ知らなかったこと、興味深いことがいくつかありましたので、その中でも私的に関心があった部分だけピックアップして感想など述べてみます。


 まずはEXODUSで増えた新キャラクターと彼ら(声優含む)の作品への入り方について、

 冲方「僕の内心では既存のキャラを食うつもりでやってほしいなと。隠れテーマは<世代交代>なので。あまり前面に出すと(略)「あ、俺、将来交代するんだ」っていう芝居が始まってしまうので。それは黙っとこうね、と言われてたんですけどね」
 KATSU「9話10話であの二人美味しいところもっていきましたけどね」

 EXODUSの表テーマは能戸総監督がアニメ誌で語っていたように「相互理解」だとも言及されましたが、裏テーマは「世代交代」だと断言したのはこれが初めてですね。

 「世代交代」と来ましたか……。
 それは受け継ぐことそのものがメインの「継承」とは若干ニュアンスが異なりますね。

 いや、もちろん前世代からの価値観や物質的精神的な遺産を受け継ぎながらの交代なのでしょうけど、要は作品の表舞台で活躍するキャラクターを次世代に入れ替える、ということが「世代交代」の目的ですよね。

 確かに26話エンディングで残ったパイロットを見ると、剣司と咲良(夫婦)、里奈と彗(カップル)、零央と美三香(カップル)という、非常に分かり易く次世代を担うキャラクターばかりでしたね。

 EXO26-165_R.jpg

 そうか……だから片想い代表のカノンや暉は死んでしまったのか……。(←チガウ)

 裏テーマが「世代交代」で、しかもそれを演技に出ないように黙っていたということで、先日ツイッターで一部炎上(?)した三間音響監督の呟き(EXODUSの真の主役は第三世代)も、最初からスタッフ内で認識が一致していたということですね。

 とは言えあの不評の主因はそこではなく、おもに三間さんのツイートに石井さんへのリスペクトが足りないことに尽きるんですけど。(^^;)

 それと「世代交代」を描くなら、思い切って派遣部隊の描写を大幅に削ってでも、竜宮島に残った彗たち第三世代を中心にもっとキャラクター個々のドラマを描いていた方が誤解は少なくてすんだはずだと思います。

 裏テーマを黙っていたことで、

 声優の演技に世代交代の意図が滲み出なかった → 視聴者にも当然ニュアンスは伝わってこない
 
 という、結果としてある種の悪循環(苦笑)になっていたわけですしね。これで「継承」だけでなく明確に「交代」であることを「察しろ」というのは難しいのではないかと。
 
 まあ、私はファフナーが群像劇であっても一騎と総士をガチ主軸として見てますので、そんな意図があろうがなかろうが全然屁のカッパですけどね!(笑)

 竜宮島と派遣部隊の描写割合がほぼ半々だったのは、作品内世界を広げる意図とあまりに竜宮島中心にドラマを描くと、最終的に島が沈むことで受けるファンのダメージが計り知れない、と考慮したのかもしれませんけどね。
 
 私は島が沈むのも想定内でしたが、ショックを受けてるファンの方は多いですものね……。


 続いては、一騎と真矢だけでなく視聴者も混乱(笑)に陥れた総士の「存在と無の地平線」の説明について、

 冲方「英雄っていうのは異世界に行って<世界の智慧>そのものを手に入れるんですけど、その<本当の真実>っていうのは現実世界では言葉にならないものなんです。(略)総士はそのフェストゥムの世界に行って、彼らに触れたけれども、彼らのことをどう一騎たちに説明していいかは結局わからない」

 うーん、なるほど……。究極の「真理」というものは人間の言葉では言い表せない、というのは確かにあるかもしれませんね。
 人の言語はそこまで完全ではありませんしね。

 ただ、言葉で伝える以外に術を持たない人間である私としては、だったら絵画でも音楽でも数式でも他に伝える手段は何かないのかと考えてしまいますね。
 総士のポエムとかポエムとかポエムとか。(大事なことなので三度言う)


 冲方「分からないからまだ争いが起こってる。総士のもどかしさと、総士自身の使命みたいなものと、あと、それはあの……一騎がより総士の側に行き、真矢がより人間の側に行く、っていうあの三者の関係もあそこで同時に表わしているので、分からなくていいんですよ」
 
 総士と一騎の話のつなぎがちょっと不明瞭ですけど、言いたいことは分かるのでそこは置いといて。
 
 あのシーンで、一騎がより総士の側に行き、真矢がより人間の側に行くことを表していると言われて、非常に得心がいった部分があります。

 EXO14-144_R.jpg

 放送当時、三人でいたのに一騎はどちらかというと真矢より総士と話したり彼の方をよく見ていた、という意見を見かけて私も実際そう感じていました。

 一騎は総士の説明を「全然」と言って理解できなかったけど、それは決して総士の説明を聞き流したり投げたりしてたわけではなくて、むしろ逆に総士が誰にも説明できないことを経験して知っている、ということに引っ掛かりを覚えていたんでしょうね。
 
 それを無意識でずっと考えていたからこそ、18話アバンの夢の中で「誰かがいなくなるたび、そいつがいた証拠が世界のどこかに残るっていうのか?」と言えたんだと思います。

 そして「分からなくていい」ということはつまり、総士の見たもの知ったことを知りたがる一騎にとっては最大のフックになったわけで、このあと総士が「彼らの世界に触れるには、彼ら自身に触れるしかない、ということだ」と言ったことに「それが俺の命の使い道なら、そうする」と答え、ダメ押しが24話でミールが伝えた「皆城総士が存在と無の調和を選んだように」というセリフであったわけですね……。

 これだけ地道にフラグを積んでれば、そりゃあ一騎も人として命を終えるよりミールに命をもらってでも生きますわな。
 いや~、じつに嫌な脚本ですね!(褒めてます)

 一騎がより総士の側に行く……これまで総士は「非日常」の象徴であり真矢は「日常」の象徴でしたが、一騎は「どうしても非日常向きの人」だと、以前から冲方さんは仰ってましたね。(BDブックレットP137)

 そんな一騎が1期からEXODUSまでずっと、真矢より総士に惹かれ続けるのは当然であり必然であったと思います。
 とはいえ、EXODUSでは戦闘機部隊に所属し人を殺めた真矢の存在も「日常」とは言い難い状況ですが。(^^;)

 むしろ総士を「フェストゥム」、真矢を「人間」に置き換えて考えた方がより合うのかもしれませんね。
 最終的には「非日常向きな人」である一騎もフェストゥムと融合してしまいましたので。
 
 しかし、この語りを踏まえてあの場面をもう一度見直すと、「一騎くんも皆城くんも、帰る場所があるんだよ」という真矢のセリフが、より痛切に響いて聴こえそうですね……。(放送終了後まだ見直してませんけど)

 真矢はもしかしたら、この時点でもう二人がどこかへ行ってしまいそうな予感を抱いてたのかもしれませんね。
 最後には総士はいなくなり、一騎は人間ではなくなってしまったという……。


 そして私にとって最も興味深かったのが、続編があるとしたらの妄想話について、
  
 冲方「ざっくり全部妄想だけで言うと、ファフナーの新主人公がいるとしたら、一騎を倒さなきゃいけない」
 KATSU「一騎も英雄に君臨しすぎちゃってますからね、もう」
 冲方「てゆうか、あれはもう英雄として循環したんですよね。無の世界から総士のように戻って来て、あれはもう究極の真実に触れてるわけですから。若干まあ人間の心を保つ、ということで現世に留まってますけど。あのまま行くともう<賢人>として、まあいわゆる<賢者>ですね。世の争いには何かしら理由があるんだよ、というレベルまで行っちゃわないとおかしいわけですよ。でもそういう<見守るもの>の殻を破るのが次世代なので、敵対するというわけじゃないけど、それまでの<英雄像>を、なんらかの形で上回っていかないといけない物語になるんじゃないかなあ、と思いますね」

 なるほど賢者。(笑)

 あの一騎が「賢者」ですか……とうとうそんな存在にまで行き着いてしまうんですね。

 まあでも、26話エンディングで一騎と操それに甲洋が、子総士の生誕に立ち会うにしてもなぜ「東方三博士」に擬されていたのか。

 EXO26-170_R.jpg

 先に説明しておくと「東方三博士」は「三賢人」「三賢者」という別名があるのです。私は語呂が良い(笑)ので「三博士」を好んで使ってますけど。

 そんな「三賢者」に一騎たちが割り当てられたのは、まだ若すぎるし少々力不足ではないかと思ってましたけど、彼ら三人はフェストゥムとフェストゥムになった人間であり、冲方さんの言う「世界の真実」に触れた存在、という意味も示していたんですね。

 見た目の若さは関係ないんですね、おみそれしました!(^o^)\ペシッ

 何度も触れているユング心理学で考えますと、一騎の到達するとされる「賢者」とはすなわち元型で言う老賢人「オールド・ワイズマン」であり、それが示すものは男性にとっての「成長の最終到達点」であり「父親」でもあり、「知恵と理性の表れ」でもあるわけで、心理学面から見ても「大人になった」「父親(代わり)になった」「世界の真実を知った」一騎が到達するイメージとして相応であると考えられます。

 ゆえに、その一騎が新主人公に「倒される」と冲方さんが語るのも、全く正しい有り様であると言えるかと思われます。

 「オールド・ワイズマン」の否定的な側面(支配する、導く、試練を与える)は人が「成長過程で乗り越えるべき象徴」であるからして、たとえ一騎の「見守り」がどんなに見かけ上は優しいものであったとしても、その「殻」を壊されて次世代に(象徴的に)倒されることもまた是であり不可避なのだと思います。

 しかし、ここは「真壁一騎」なんだから壊すならぜひとも「壁」にして欲しかったんですけど「壁を壊す」――進撃の巨人か!ビシッ、ってなっちゃいそうですね。(^^;)
 何しろEXODUSにはエレンとミカサ(の中の人)がいましたし。

 馬鹿なことはおいといて、もしかすると象徴的にではなく本当に物理的に世界の秩序と生命力更新のための「王殺し」的な「倒される」という意味合いもあるかもしれませんが、それはキャンベル氏じゃなくてフレイザー氏の「金枝篇」なのでファフナーでは無いかな……いやあるかな……。
 
 まあ、ようは超絶シンプルに言えば、一騎が「新主人公にとって超克すべき偉大な男性像になる」ということですね。

 一騎がめでたく新世代に「倒された」としても、その時までに彼の祝福が終わってなければ当然死んだりはしませんから、その場合は神話や伝説にあるように世界の表舞台から姿を消す「隠者」になるしかないと思いますけど。

 私としては早く使命を終わらせて、総士と再会してほしいところですけどね……。


 冲方「どれだけ立派な木も、やっぱりいつか倒れざるをえない。そのあと芽吹かないと、更地になってしまう。そこは新世代の義務でもあるんですよね」

 そう言ってもらえると、思ったより早く一騎はお役御免になれそうな気がしないでもないですね。
 そして巨樹が倒れて新たな芽吹きの喩え……うーん、やっぱりイメージとしては「王殺し」に近いような。

 今の一騎は、言うなれば英雄たちの「王」のようなものですしね。

 そういえばバーンズを籠絡した「世界の王」というフレーズ、あれはイエス・キリストに対する尊称の1つなんですよね。分かる人はすぐ分かったと思いますけど。

 言い換えれば「世界の救世主にしてあげる」、と甘~くバーンズを誘ってたわけなので、「王様? ププッ」とか笑わないであげて下さい。(^^;)

 でもバーンズが想像した「王」は、たぶんに俗物的な王様のイメージだった可能性が高い気もしますが。(苦笑)

 話を戻すと、冲方さんの続編妄想を聴く限りでは、一騎は英雄と戦士を兼ねた賢者に行き着くようなので、そうなると某掲示板やツイッターでいつのまにか生まれ変わった一騎の共通解であるところの「永遠の戦士」という存在とは微妙に異なるような印象を個人的に受けました。

 ナレインが語ったアショーカによる「命の果てを超えて生きる永遠の戦士」と、竜宮島ミールが与えた「生と死の循環を超える命をもって世界を祝福する者」は、同じものではないような気も……しないでも……ないでも……。

 
 他にもいろいろ考えさせられましたが、時間もないのでこの辺で。

 この座談会のおかげでまた少し、EXODUSに関する理解が深められた気がします。

 聞いてて実感するのは、冲方さんは物語を描くに際して忠実に「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」をなぞっている、ということですね。冲方さんに限らず世の多くの作家の基礎であるかと思いますが……。
 
 たとえば一騎を当て嵌めていくと、

 1.Calling(天命)―織姫からの使命
 2.Commitment(旅の始まり)―シュリーナガルからの脱出行
 3.Threshold(境界線)―総士と真矢との地平線談義
 4.Guardians(メンター・仲間)―ペルセウス中隊(派遣部隊)
 5.Demon(悪魔)―アザゼル型(アビエイター)
 6.Transformation(変容)―生と死の循環を超える命
 7.Complete the task(試練完了)―第四次蒼穹作戦終了
 8.Return home(帰還)―竜宮島から海神島へ移住

 このような形になるかと思います。
 ただ、これは終わったからこそ綺麗に嵌るわけで、物語が動いていた放送中はどう転ぶかまるで分かりませんでしたね。(苦笑)

 
 ちなみに私がファフナーの解釈にユング心理学を多用するのは、冲方さんの師のようなものであるキャンベル氏の神話学の基礎にユング心理学があるからです。

 キャンベル氏は心理学の段階から、さらに世界の「神話」と「物語」の知識と構造を理解し深めて、神話学に発展されておられるわけですが。

 なので、ファフナーを冲方さんのバイブル「神話の力」よりもさらに基礎的なユング心理学で読み解いても、さほど的外れにはなってないだろうなと思っています。

 とは言え、ユング心理学と言っても私の浅学な我流の解釈にすぎませんが。(苦笑)

 冲方さんもatsukoさんも仰ってましたが、ファフナーはたくさんの人が様々な解釈が出来る作品なので、本当に面白いですね。

 それにしても一騎が「賢者」……一騎が賢者にねえ……賢者……私としては全面同意だし大歓迎ですよ……。



 当記事内のアニメ画像は全て、
 ©MBS・FAFNER EXODUS PROJECT・XEBEC及び©King Record.Co.,Ltdに帰属します。

スポンサーサイト
2016.03.29 / コメント: 0 / トラックバック: 0 / PageTop↑
コメント
 
Title
 
 
 
 
 
 
Secret 


Pagetop↑
トラックバック
Pagetop↑
プロフィール

如月 咲夜

Author:如月 咲夜
FC2ブログへようこそ!

コメント&トラックバックは、スパム対策としてすぐに反映されないようにしておりますのでご了承下さい。

月別アーカイブ
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
FC2カウンター